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こころに余裕を持って
前回に続き、水処理のお話です。
一般的に水処理は、物理的処理と生物的処理がありますが、生物的処理は微生物の力を利用して汚水をきれいにする仕組みです。
さて、みなさんは、「乳牛に音楽を聴かせると乳の出が良くなる」とか、「メロンやイチゴに音楽を聴かせると甘くなる」といった話を聞いたことはありませんか?
牛は音楽によってリラックスし、その結果として乳量が増えると言われています。また、果物も音楽の振動などの影響で生育が促進され、糖度が上がるという話があります。
それならば、水処理を担う微生物に音楽を聴かせたら、もっと元気に活動して水質が良くなるのではないか――。
そんな発想から、私が担当していた某ゼネコンの設備担当者から「社内研究テーマとして試してみたい」という相談を受けたことがあります。
さっそく秋葉原へ行き、水中スピーカーやCDプレーヤー等を購入。選んだ楽曲は、ベートーベンの交響曲第3番「英雄(エロイカ)」でした。この曲の副題は「だんだん勇気が湧いてくる!」微生物たちに伝わって活発化して欲しいという願いからです。
ある工場の水処理施設に機器を設置し、約3か月間、1日8時間にわたって音楽を流し続けました。その結果、画期的な改善とまでは言えませんでしたが、水質指標において約3%の改善が確認されました。
もちろん、これだけで大きな技術革新になるわけではありません。しかし、「微生物に音楽を聴かせたらどうなるだろう?」という素朴な疑問を実際に試してみる。そんな一見馬鹿馬鹿しいと思える、自由な発想と遊び心を持って研究に取り組めた時代だったなあと、今でも懐かしく思い出します。
ギスギスした世の中と言われますが、こころに余裕をもっていい意味で「遊び心」を大切にしたいものです。